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目標を達成する記録の科学

Report

記録の力

リーズ大学から出た論文によると、Benjamin Harkin博士らの研究グループが出した研究結果に、目標を達成する時には、進行度を記録することが最も有効であることが発見されました。そして、Harkin博士の研究チームが138の研究データを解析したところ、進行度の記録を公開することがもっとも効果的だったということがわかった。

記録は目標の達成率を有意にアップさせる

まず結論から引用すると、

ゴールまでの進捗度のモニタリングは、(a)記録の習慣を大きく促進し、(b)記録の習慣がつくと行動を起こす確率や目標の達成率が有意にアップする。

とのことです。記録に効果がある理由としては、

  • 自分の現在位置が把握しやすくなる
  • そもそもゴールの存在を定期的に思い出せる
  • 必要な行動を取るタイミングがわかりやすい

が要因のようです。

具体的に「記録」にはどれぐらいの効果があるの?

では、具体的な効果量については、

  1. 記録習慣の促進 d+=1.98 , 95% CI [1.71, 2.24]
  2. 目標の達成率 d+=0.40 , 95% CI [0.32, 0.48]

といったところ。「記録習慣をつける効果はかなり高い!」「目標達成の効果もそこそこある!」みたいな結果になります。「そこそこぐらいの効果なの?」と思うかもしれませんが、この手の心理テクニックでd+が0.40もあれば優秀なほうかと思います。

目標達成率をあげる記録の方法

さらに、この論文では「記録の効果をアップさせる3要素」も抜き出してくれていて、かなり参考になります。

  1. 自分の結果に直結する数値にフォーカスして記録する
  2. パブリックコミットメントをする
  3. アナログで記録を行う

1.自分の結果に直結する数値にフォーカスして記録する

シェフィールド大学から出た論文(1)は、あらためて「記録の凄さ」について調べたナイスな研究になっております。

これは過去に行われた138件の実験から、19,951人分のデータを統計処理したメタ解析。大量のデータをベースにして、より正確な結論を導き出しています。

今回の実験では、おもに健康と記録の関係にポイントを置いてまして、

  • 減量
  • 禁煙
  • 食生活の変化
  • 高血圧の改善

などのゴールが達成しやすくなるかを特に調べた模様。

記録の回数が多いほど成功の確率は高くなる

その結果は、

  • やっぱりゴールまでの進歩を記録したほうが、目標達成率は断然に上がる
  • それも、記録の回数が多ければ多いほど成功の確率は高くなる

という感じだったようです。あらためて「記録の凄さ」に対して科学のお墨付きが出た形であります。

研究者いわく、

ゴールまでの進歩をモニタリングする行為は、目標設定と目標達成のどちらにおいても、極めて重要なプロセスだと言える。進歩を記録することで、ゴールが具体的な行動に変化するからだ。

とのこと。

記録は最終結果にフォーカスしないと意味がない

ただし、いくつかの注意点もありまして、

  • 行動を変えたいときには、自分の取った行動だけを記録しないと効果がない
  • 結果を出したいときには、結果に向かう過程のみを記録しないと効果がない

って傾向もハッキリ現れたらしい。たとえば減量を目指す人に「毎日の食事を記録しなさい!」と指示した場合、多くの人がダイエットに失敗しちゃう傾向が強いんだそうな。

もし食事の習慣を変えたいなら、食べた物を毎日記録すればいい。しかし体重を減らすのが目的の場合は、体重計の記録に集中すべきだ。

とのことで、とにかく最終結果にフォーカスしたほうがいいらしい。

つまり、

  • 貯金を増やしたければ、貯金額の増減だけを記録
  • タバコを止めたければ、タバコを吸わなかった日数だけを記録
  • 運動を続けたければ、ジムに行った日数だけを記録

といった感じでシンプルな書き方に徹したほうが良いわけですね。目標に向かうときは、不安のせいでつい大量の記録を付けがちですけども、これは楽でいいっすね。

さらに研究者いわく、

他にも記録の効果をアップさせる方法がある。特におすすめなのは、他人に記録の報告を義務づけるか、または記録を公開してしまうことだ。

とのこと。このへんは行動経済学の「誘引バンドル」と同じ結論ですね。

2.パブリックコミットメント

心理学者のクルト・レヴィン氏が提唱した「パブリックコミットメント」という目標達成のアプローチ方法を紹介します。

「パブリック・コミットメント」とは、自分が成し遂げようと決意したことを周囲に伝える行為を指します。

アメリカの心理学者であるレヴィン氏が行った実験によれば、第二次世界大戦中に食肉不足だった状況を打開するため、主婦を2つのグループに分け、片方には牛の臓物を使うことについての講習を受けさせ、もう片方にはディスカッションをさせたうえで「牛の臓物を自分の家庭で使う意志がある」と全員に決意表明をさせたところ、決意表明をしたグループにいた主婦の方が実際に牛の臓物を使っていた割合が高かったのだそう。

このように人は自分の意見や目標を公にすると、それにあった行動をしなくてはという心理が働き、実際に言ったとおりの行動を起こす確率が高くなります

3.アナログで記録する

PCやスマホでメモするよりも、ペンと紙を使ったほうがいいよ!」と主張する研究があります。

これはプリンストン大学の論文でして、学生たちにTEDの動画を見ながらメモを取らせたんですな。その際、半分のグループにはラップトップを使わせて、残りには紙とペンでメモってもらもらいました。

その後、動画の内容について質問したところ、次のような差が出たみたい。

  • 事実に関する質問:ラップトップと手書きのグループに正解率の差は出なかった
  • 概念的な質問:ラップトップよりも手書きのほうが正解率が高くなった

「事実に関する質問」は、「日本の人口は?」とか「スウェーデンの社会保障費は?」といった具体的なデータを問うもので、「概念的な質問」は、「日本とスウェーデンの平等観の違いは?」のように、話の要点や考え方を問うものであります。

この差は1週間後のテストでも変わらず、手書きのノートで内容を復習したほうがラップトップよりも成績が良かったそうな。

これは、ラップトップだと入力が簡単なせいで逆に注意力が途切れ、ボーッとキーボードをたたくだけの状態になりやすいのが原因らしい。また、キーボード入力が速いと、脳が十分に情報を処理する時間がとれなくなっちゃうそうな。

参考文献

Harkin, B, Webb, TL, Chang, BPI et al. (5 more authors) (2016) Does Monitoring Goal Progress Promote Goal Attainment? A Meta-Analysis of the Experimental Evidence. Psychological Bulletin, 142 (2). pp. 198-229. ISSN 0033-2909

目標を達成するには、進行度を記録して公開するのが効果的

Does Monitoring Goal Progress Promote Goal Attainment? A Meta-Analysis of the Experimental Evidence.

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